秋の抜け道

雑木林を抜けて
あなたが帰っていった道は
秋が見える道なのだ
池をめぐってお稲荷さんに出れば
あなたは独りつぶやくだろう
私はきっと耐えられます、と
武蔵野の秋は
澄んだ空に風が笛を吹き
電車がきらめきながら走り
妙に心がはしゃいだ
離れ離れの恋人たちの瞳さえ
軽やかに歌ったりする
こわれてしまった愛について
果たせなかった誓いについて
思い出すのはずっと後でいい
雑木林を抜けて行った道は
寂しさをすり抜ける道なのだ