秋の春情

おだやかな秋に
明日は上野に行こうと
君を連れ出した
公園をめぐる季節の
限りない記憶のかけらが
落ち葉のように散り始める

多分あしたも空は晴れ
ぼくらは無口に愛を語り
動物たちに会い
乾いた道を歩くだろう
子供のように手をつないで

遠い春に出会い
秋に別れた不忍池の辺りを
あの人は今も訪れるだろうか
君を知る前の春情が
日暮れのように降り始める<不忍池・上野>