海の子
水平線をみてしまったら
だれもが海の子になる
海の子は
大切な無数の思い出たちを
渚に捨て始める
夕陽が水平線に沈むのを見ると
捨てるということが
少しも哀しくないことに気づき
明日という日が
必ずくるように思えてくる
海の子は
心がひろびろとしてきても
そのことに気づかずに
いつまでも水平線を見ている
語りつくせぬ愛のように
語りつくせない愛があれば
もう言葉などいらない
そしてぼくらは無口になり
大自然の一部のように生きよう
海と空といくつかの島影が
なぜこんなにも溶け合うのか
そしてぼくらは無口になり
眺めの中にうもれていく
僕らの愛を
言葉や思惟で飾るのはよそう
今ぼくらが見るこの海の景色を
感嘆詞で彩るのはよそう
今僕たちの瞳は
同じ思いで同じところを
見つめ続けているのだから